エッセイのページ

 デート

 聞いてください! 主人とのデートスポットを。
待ち合わせ場所はS市民病院前。老若男女でざわめく通路を通り抜けて、行きつけの場所に連れて行ってやると、まづ、脳神経外科へ。「や〜先生!」と親しげに話し込んでいる。続いて眼科と皮膚科。ここは、女医さんだから心が和むと勝手な事を言っている。少し歩いてリハビリステーション科でも、冗談を言い合える理学療法士さんやインストラクターさんがいる。
思うに、この人は仕事をリタイアーしてからも、昔とった杵柄で、営業マンをしているんだろうかと思うくらい人付き合いがうまい。最後に、検診などで頻繁に訪れると言う内科を得意気に説明。ははア〜ん 分かった! 脳梗塞で病院に担ぎ込まれた時に「大丈夫ですか?」と、手を握ってくれたという看護師長さんがいる所だな。ド単純男の主人は、自分にだけに特別親切だと思い込んでいるようだ。

「せっかく内科に来てるから言うけど・・・」と、私は主人に隠していた事を言った。
実は、2ヶ月ほど前から手術済みの盲腸の横に、四六時中しくしくと痛みを感じ、気になっていた。
「思い切って受診してみようかしらん?」っと言った途端、
「あ〜それは、頭が悪くなってきたんだ!!」と、訳の分からない事をわめき、無理やり脳神経外科へ連れていかれた。窓口で「どうされました?」と聞かれ、まさかお腹が痛いとは言えまい。
「9年前に脳動脈瘤と、くも膜のう胞の手術を受けたのでその再検に・・・」と相成った。
「ほらみろ 検査が必要だっただろ?」と主人
「違うったらっ! 私は、お腹が痛いから内科へ行きたいのにっ!」と、待合室で喧嘩だ。
 
 そこで、主人の顔パスが効いたかどうかは別として、内科も受診出来る事となった。
内科では、触診のあと、大腸に炎症・ポリープ・癌などの異常があるかどうかの大腸内視鏡検査を後日受けることとなり予約をした。が、検査当日に、水2リットルに腸洗浄液を作り云々の説明を聞き、水を飲む習慣の無い私は、恐怖のどん底に落とし入れられるはめになるのだが・・・・。
脳神経外科でも問診のみならず、CT・DIC・DIPの3DCTAなる三つの検査をこれ又、後日受けることとなった。ああ・・神様・・・。

 落ち込んでいる私に、
「ランチタイムとしよう!」と地下へ誘う。
洒落たレストランと言いたいとこだが食堂である。それも医師や看護師さん達が優先で、残ったメニューを入院患者やその関係者がいただけるという場所だ。ここでも、主人は知り合いの先生や食堂のおば様方と親しげにしている。
「ここのカツカレーは安くてうまいぞ」と言うので注文。
デートに、病院の食堂で定番のカツカレーはないと思うんだけれど トホホホ・・・。

「検査日にも、ちゃんと付き添ってやるから。一人にしておくと何をしでかすか分からん。危なっくってしょうがないな」と夫としての威厳を誇示して歩きだした。。
「心配するな、墓場までも一緒に行ってやるから」と付け加えられ、
「いいえ それは・・・」と言いかけて、「はい 何処までもお供いたしまするウ〜」と大きく目をむいて、アカンベーしたのをこの人は知っているかな。

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