エッセイのページ

もうッ・・・笑うしかない!?

久しぶりに、娘二人が揃って遊びに来るという。遊びに来るというよりは、「NAOちゃん遊んであげようか?」と、親の私をちゃん呼ばわりして恩着せがましくやって来るのだ。っというのは、嫁ぎ先の楽しいニュースを聞く度に、お嫁として可愛がってもらっているのは非常〜にうれしいのに、こっちにはちっと来ないんだから・・と、ぼやくからだ。ひがんでしょぼくれている私に、「嫁に行った娘だ。お前だってそうだったじゃないか」と主人。

 二人が来る! 来るんだ〜。キャッホー!!
いつもは、主人を喜ばせるためにサプライズ訪問をさせているのだが今回はバレてしまった。前の晩からバタバタ バタバタと忙しなく台所に立っているからだ。
主人は主人で、来ると知ったら一張羅のシャツに着替え、めったに聞きもしないジャズを流し、悦に入った顔をして待ち構えている。
ピンポーン。
うん?サプライズ好きのあの子達は、私を喜ばせようと約束の時間より早く来たんだナ、未だ着替えてないけどまっいいか、と、思いっきりドアを開けた。
「どうされたの?」っと言われ、「いやア〜」と言葉が無い。いつも身だしなみを整えている私しか見たことのないご近所さんが、髪を振り乱している私を見てびっくりのお言葉。ショック。麹みそを作ったからと届けてくれたのだが・・・。

 携帯が鳴った。
「もう着い・・・?」と言いかけて絶句。上の娘のジュンコが泣いている。聞けば、ロメオ様の具合が悪くなり、目が離せないと言う。猫のロメオ様だ。
ジュンコ夫婦が新婚の約15年前、ペット禁止のマンションの契約に行く途中、雨でずぶ濡れになっている猫を大発見。心を鬼に出来ずに拾いあげたのが運のつきで、猫嫌いだったお婿と夫婦喧嘩もした。しかし、ジュンコが仕事で出張中、この子はしたたかで、お婿の膝に「ご主人様ア〜」とすり寄ってすっかり市民権を得てしまい、ロメオと名づけられ、御曹司となった。
阪神淡路大震災の時は、二人でロメオだけ抱きかかえて逃げたと言う。
夫婦が海外へ行った時はいつも、主人と私は、餌 いや、お食事係としてはせ参じたものだ。その彼も、人間でいえば80歳くらいのご老体で、最近入退院を繰り返している。そんなこんなで
「ごめん 今日は行かれへん」と言う。
いいよ、ロメたんの面倒を見てあげなさいと言ったものの、テーブルを見れば、とても4人分とは思えないくらい大量の料理が主賓を待っている。

 またまた携帯が鳴り飛びついて出ると、下の娘のマコからだ。
「お姉ちゃんが可哀想だし、NAOちゃんが待ってると思うけど、ああッ どうしよう・・・」
「そりゃ〜・・・ お姉ちゃんとこへ行ってあげて」っと言うしかなかった。
「うん、 じゃ〜 あさって泊まりに行ってあげるから」っと、あっけらかーんと言われ、いっぺんに力が抜けてしまった。

 ふてくされてトレパンに着替えた主人と、鏡を見れば髪を振り乱したまんまの私。
みやげ用にと奮発して購入しておいたブルーマウンテンのコーヒ豆と、並んでまで買った評判のロールケーキ。
リクエストに応じて作ったエジプト料理のムサカや韓国のチヂミなどなど、娘達の好物を前にしてしょぼくれた私と主人は、顔を見合わせて、ああッ・・・もう、笑うしかない。トホホホホ・・・・・。


 ☆この原稿を書き終た直後に、ロメオが天国へ旅立ったとの一報が入って・・・・・☆
 

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