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エッセイのページジュンコの留学奮闘記(最終回)
☆ お帰りなさい! ☆ 4月になって、私は心身共に忙しくなった。8月に帰ってくるジュンコのために、日本の高校への復学手続き、制服や教科書の購入、先生への挨拶、それに付随する心配も現実のものとなってきた。 自己主張が要求されるアメリカ社会の中で、対等に渡り合ってきたジュンコは、多分日本社会の中では頭打ちになるであろうし、精神的にぐんと大人になった彼女が、自分よりも一つ年下のクラスで1年生をやり直さなければならないそのギャップは、アメリカに行った時に受けたカルチャーショックよりももっと大きいだろう。それをどう乗り越えるかは彼女の今後の大きな課題だが、長い人生から見ればたった1年のやり直しだ。『変わった経験は失った時間よりも多くの物を与えてくれる』の格言を私は信じたい。とまあ、あれやこれや思い巡らす内に、とうとう帰国の日となった。 いざ帰って来るとなると、万感胸にこみあげるものがあって、何と言って迎えようか・・・再会する最初の言葉がどうしてもみつからない。とにかく私は、真っ赤なバラの花束を持って待った。 1986年8月2日。ジュンコは、タミーの親類や友人達がしてくれた2日続きのさよならパーティの興奮も覚めやらぬまま空港に向かった。車の中ではタミーも Dadも Mom も押し黙っている。誰かが何かを言えばどっと涙が出そうでお互いが黙っていた。 思えばこの同じ道を、1年前は言葉が通じなくて黙っていたんだ。不安だった。ただ、ただ空を見上げていたんだっけ。星がまるで降るように、空一面に輝いていたのを覚えている。 あれから1年・・・何故かつらかった事は何も思い出せない。楽しかった事だけがジュンコの頭を走馬灯のように駆け巡った。 ミネアポリス・セントポール空港に着くとタミーとMomが顔をくしゃくしゃにして泣き出し、思わず家族でひしと強く抱き合い”See you again " そしてまた泣いた。 飛行機に乗ってから見るように言われた白い小さな箱を、ジュンコはそっと開けてみた。鍵だ!! タミーの家の鍵だ・・・。そして次のようなメッセージが入っていた。 June We want you to have this key to our home. It's also your home now to. So when and if you ever come back, you now know you have a home to come back to . We love you . Mom ,Dad & Tammy . (私達はあなたにこの鍵を持っていて欲しいのです。 今はあなたの家でもあるからね。いつでも、もしジュンが 帰ってくるんだったら、あなたは帰ってくる家が あることをわすれないでね。) ☆長い間、お付き合い下さいましてありがとうございました。私は、この親愛なる家族に会いたいと思い立ち、ジュンコとミネソタ州を訪れました。空港で大喧嘩をしたり迷子になったりの珍道中旅行の話は又の機会に・・・☆ |
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